安全保障

2008年12月 7日 (日)

ハンギョレ新聞記事(08年11月21日)翻訳

 11月30日のブログで、私の北東アジア非核兵器地帯の提案を紹介した以下の韓国語記事をpdfで紹介しました。

 ハンギョレ新聞韓国語記事(08年11月21日) 「hangyo_08.11.21.pdf」をダウンロード

 この記事の日本語訳を大畑正姫さんが作成して下さいましたので、以下に掲載します。

【ハンギョレ新聞(2008.11.21)】

「核の傘の下にいる限り、朝鮮半島の非核化は限界」
東北アジア非核化のための「3+3構想」の提案

 「朝鮮半島の非核化という目標を達成するためには、北朝鮮の非核化だけが重要なのではない。米国の核軍縮と核政策の緩和は当然のこと、米国の核兵器に依存する日本や韓国の安保政策の転換も同じく必要である」。
 日本、横浜にある非営利団体ピースデポの梅林宏道特別顧問は20日、「東北アジアにおける協力的安全保障としての非核兵器地帯」という主題発表で、「米国は核の傘によって核拡散を抑えられるという論理だ」と説明した。米国の核戦略のおかげで同盟各国が核兵器保有の誘惑からまぬがれるとして、自国の核保有を正当化するというものだ。
 これに対し梅林特別顧問は、「朝鮮半島の非核化、ひいては東北アジア非核兵器地帯の設置」を代案として提示した。これは日韓両国が米国の核の傘から脱したときに起きる安全保障への憂慮を払拭させる方法だとしている。
 応用物理学者でもある彼は、域内非核兵器地帯のために「3+3構想」を示した。現在、国際的には核兵器保有国と認められていない朝鮮半島の南北と日本が非核兵器地帯を構成し、核兵器保有国である米国とロシア、中国がこの地域への安全保障を保証する6カ国間の条約だ。3+3構想で朝鮮半島の南北と日本は、核兵器の開発・保有が禁止されるばかりでなく、安全保障政策のあらゆる面で、核兵器の依存も禁止する非核国家としての義務も負うことになる。
 核保有国はこれを尊重し、核攻撃や威嚇を行わない約束をして、地域内の安全を保証する。6者会談は不完全ではあるが、このような構想に接近している。
 この構想が実現されれば「朝鮮半島の非核化」に集中する現在の6者会談が看過する弱点を補完できるというのが梅林の主張だ。例えば日本は、北朝鮮だけでなく中国の核の脅威からも脱し、日本の核燃料再処理施設やウラン濃縮施設に対する査察システムを確立する契機となり得る。彼は「朝鮮半島の非核化と東北アジアの非核地帯設置は二者択一の問題ではなく、不可分の問題と考えるべき」だと強調した。

韓国・北朝鮮・日本は「非核の義務化」
米国・中国・ロシアが「安全」を保証

 彼は1995年、ノーベル平和賞の受賞者ジョセフ・ロートブラットの言葉を引用して、「核兵器は根本的に非道徳的だ。軍人と民間人、侵略者と市民、現世代と次世代を区分せずに無差別で殺戮する」。ロートブラットはアルベルト・アインシュタインやバートランド・ラッセルなど著名な学者を中心とした反核運動団体「パグウォッシュ(会議)」の創始者のひとりだ。梅林顧問は北朝鮮の核兵器、米国の核兵器だけが反人道的なのではなく、「日本や韓国に提供された米国の核の傘も反人道的犯罪」だと述べた。

釜山/キム・ウェヒョン記者oscar@hani.co.kr

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2008年11月30日 (日)

ハンギョレ新聞国際シンポ(釜山)で北東アジア非核兵器地帯を提案

 08年11月19~21日に韓国プサン(釜山)で、「変化する世界における朝鮮半島と北東アジアの平和と繁栄」と題するシンポジウムが開催され、パネリストとして参加した。ハンギョレ統一文化財団、プサン広域市、韓国土地公社の共催であるが、ハンギョレ新聞が運営の中心を担った。以下は、その時の講演内容である。3+3の北東アジア非核兵器地帯構想は、11月21日ハンギョレ新聞に紹介された。

ハンギョレ新聞記事(08年11月21日) 「hangyo_08.11.21.pdf」をダウンロード

東アジア協調的安全保障としての非核兵器地帯

§はじめに――世界と地域の共鳴
 歴史にはグローバル(世界規模)な関心と利害がリージョン(地域)の関心と利害に、密接に共鳴しあう時期がある。1995年前後の時期における東南アジアはそのような地域であった。冷戦時代の東西対立が解け平和の配当が行き渡り始め、世界的には50年代からの懸案であった包括的核実験禁止条約(CTBT)の締結に向けて交渉が勢いを増していたが、同じ東西対立の解消の中でASEANは長年の課題であった東南アジア非核兵器地帯を成立させた。世界と地域は一つの気運を共有しつつ、実際には後者が先行して前者に刺激を与え、地域が世界の変化を後押しした。
 2010年に向けて、このような世界と地域の共鳴関係を私たちの北東アジアにおいて作り出せないだろうか。
 2010年とは春に核不拡散条約(NPT)再検討会議が開催される年であり、グローバルな観点で見るとき、そこに向かって肯定的な動きが顕在化している。米国においても新大統領の下で変化の兆しがある。本論では核兵器を巡る情勢の2010に向かう動きをまず整理したい。そして、それを踏まえた上で、朝鮮半島の非核化のための6か国協議が置かれている現状を考察し、北東アジア非核兵器地帯構想が切り開くことのできる新しい可能性について論じたい。

§核兵器に依存しない安全保障へ
 10月24日、ニューヨークの国連本部で開催された「東西研究所(East-West Institute)」主催のシンポジウムで、潘基文国連事務総長が画期的なスピーチを行った。テーマは核兵器を中心とする大量破壊兵器の軍縮である。潘事務総長は「私の国は通常戦争の惨害を蒙り、核兵器や他の大量破壊兵器の脅威に直面してきた」と個人的な体験を重ねつつ、核兵器に焦点を当てて率直かつ大胆に論じた。核兵器を焦点化するのは、それが比類のない危険を人類にもたらし、「核兵器のない世界」は人類が目指すべき最高級の価値であるにもかかわらず、いまだにそれを非合法化する条約が存在しないからである。しかも、環境と経済危機が地球規模において広がる中で世界システムの脆弱性が増加すると予想されるとき、核兵器は優先的に撤廃されなければならないであろう。そのような文脈の中で潘事務総長は5項目の提案を行った。ここではとりあえず、相互に関連する第1と第2の提案に着目したい。すなわち、第1の提案は「強力な検証システムに裏打ちされた核兵器禁止条約」もしくは「相互に補強しあう(核兵器禁止の)別々の条約の枠組み」の交渉を開始することを求めるものであり、第2の提案は国連安保理の常任理事国(NPT上の核兵器国でもある)が、この交渉過程における安全保障問題について協議することを求めるものであった。協議すべき内容には非核兵器国への核攻撃・核攻撃の威嚇を行わないという明確な保証を与えることなどが含まれる。
 これらの提案を国連事務総長が行ったことは画期的であるが、決して唐突ではない。NPT再検討会議の積み重ねの中で生まれてきた「世界は核兵器に依存しない安全保障体制に向かうべきである」という主張が、今回の事務総長提案という形をとって姿を現したものと理解することができる。この積み重ねの経過を要約しておこう。
 95年のNPT再検討・延長会議は全会一致で3つの決定と1つの決議を採択し、それを条件として条約の無期限延長に合意した。その決定の1つ「核不拡散と核軍縮の原則と目標」において、「核兵器国は、核兵器の廃棄を究極的な目標として、世界的に核兵器を削減するため、体系的かつ前進的な努力を断固として追求する」と合意したのである。 つまり、ここでは核軍縮について、場当たり的なやりかたではなく、また、一時的に後退するようなことを許さず、「体系的かつ前進的」に努力すると決定した。
 この合意は、翌年の国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見によっていっそう強化された。勧告的意見では、NPT第6条の核兵器全廃の義務について、単に交渉を行う義務があるだけではなくて、交渉を完結させる義務があると、全判事が一致した意見を述べた。
 2000年のNPT再検討会議は、95年合意文書とICJ勧告を基礎にして、核兵器国にいっそう強い圧力を加えることに成功した。98年に結成された新アジェンダ連合(現在の構成国は、アイルランド、スウェーデン、メキシコ、ブラジル、ニュージーランド、エジプト、南アフリカの7か国)がリーダーシップを発揮し、全会一致の最終文書の採択に漕ぎつけたのである。最終文書では第6条に関して13項目の実際的措置に合意したが、その中には、「不可逆性の原則」「透明性の増大」「作戦上の地位の低下」など重要な合意が含まれた。なかでも「核兵器国は保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束を行う」と、いわゆる「完全廃棄の明確な約束」という文言が採択された。
 当然にも次には、「明確な約束」の実行が問われる。しかし、01年のジョージ・W・ブッシュ政権の登場によって、この流れは一時中断を余儀なくされた。05年の再検討会議は何も決定できないまま、すべてを2010年会議へと積み残したのである。幸いその後、06年以来、2010年に向かって3つの重要な高い政治レベルの動きが登場することになった。それらはすべてが、「核兵器に依存しない安全保障」への転換を次のステップとして求める内容のものとなった。
 まず06年6月、「大量破壊兵器(WMD)委員会」報告書が公表された。同委員会はスウェーデン政府のスポンサーの下に設立されたが、委員長のハンス・ブリクス(元国連イラク調査団(UNMOVIC)団長、元IAEA事務局長)の名をとってブリクス委員会とも呼ばれる。報告書は、核兵器に関して30項目の勧告を掲げたが、その第16項目と第30項目は注目すべきものであった。すなわち、第16項目は「すべての核保有国は、自国の軍事計画を見直し、信頼性のある非核の安全保障政策を維持するためには何が必要かを明らかにすべきである」と述べ、第30項目は「すべての核保有国は、核兵器なしでの安全保障に向けた計画策定に着手すべきである。それらの国々は、・・核兵器の非合法化に備え始めるべきである」と直言した。
 次ぎに同じ06年11月末、コフィ・アナン前国連事務総長がプリンストン大学において核兵器に関する演説を行った。アナン演説は、さらに踏み込んでタイムテーブルの形で実行計画が示されることを求めた。「核兵器を保有する全ての国に対し、核軍縮の誓約を履行する特定されたタイムテーブルを伴った具体的な実行計画を立案するよう呼びかける。」
 07年から08年にかけて、米国内からはこの流れを強める独立した主張が登場した。これが第3の動きである。かつて米国の核兵器政策に責任を負ってきた高官たちが、スタンフォード大学フーバー研究所で行われた議論を経て、核抑止論が時代にそぐわないと批判し、「核兵器のない世界」を目標とする政策転換を主張したのである。彼らの主張は、ジョージ・シュルツ 、ウィリアム・ペリー 、ヘンリー・キッシンジャー 、サム・ナンという4人のアメリカの元高官のエッセイとして「ウォールストリート・ジャーナル」紙(07年1月4日と08年1月15日)に掲載された。「フーバー・プラン」と呼ばれるようになった一連の動きは、08年2月にノルウェー政府がスポンサーに加わったオスロ会議を生み出し、ノルウェー政府がそのフォローアップに取り組み始めた。
 このような一連の流れの中で、冒頭に述べた潘基文国連事務総長のスピーチが登場したのである。このスピーチは「フーバー・プラン」にも触れ、その場にはキッシンジャー元米国務次官も出席した。

§問われ始めた核兵器依存国の責任
 世界のこの流れは6か国協議の将来と深い関わりを持っている。そのことを考える準備として、核兵器を保有していないが自国の安全保障を核兵器に依存している国家、すなわち「核兵器依存国」と私が命名する国家群の問題を論じておきたい。
 世界の主張となり始めている「核兵器に依存しない安全保障」への転換は、核兵器保有国にのみ向けられていると誤解されがちであるが、そうではない。前述した1996年のICJ勧告が再確認したように、NPT第6条は、すべての加盟国に核兵器全廃のための交渉とその締結を求めている。だとすれば、とりわけ、核兵器に依存した安全保障政策を採用している非核兵器国は、核兵器国と同様な義務を負うと考えるのが妥当であろう。アメリカの核の傘に頼っている日本や韓国はそのような国の代表的な例である。ブリクス報告、アナン演説、潘基文演説が提言する核兵器非合法化の段階に進むためには、日本や韓国も安全保障政策の転換を図り、核兵器に依存しない安全保障政策への移行プランを提出することが問われることになる。
 現在、世界には、国家の公式の政策文書において核兵器への依存を謳っている非核兵器国は、ドイツ、イタリアなどNATO(北大西洋条約機構)加盟の25か国にオーストラリア、日本、韓国の3か国を加えた28か国が存在する。米国は自国が核兵器保有を継続しなければならない理由の重要な要素として、このような同盟国への「拡大抑止力(つまり核の傘)の提供」を掲げてきた。最近では、08年9月に公表された米国防長官とエネルギー長官による共同報告書「21世紀の国家安全保障と核兵器」が、米国の核戦力はこれらの核兵器依存国が「自ら核兵器を手に入れる誘因を大きく減少させている」と述べ、「米核戦力は同盟における鍵となる要素である」と明記している。このように、米国が核兵器の保有を合理化する理由として、核兵器を必要とする同盟国の存在があるという論理がまかり通っている現実は、核兵器依存国が保有国と同じ主体性を持って「核兵器に依存しない安全保障」への政策的転換に取り組むべきことを示している。
 さらに根本的な問題が存在する。国際機関や外交の場における文書や発言においては、ほとんどの場合、核兵器国への配慮と交渉の知恵として直接的表現を避けているが、核兵器非合法化が強い要求となって表出する原動力の根本に「核兵器の非人道性」に対する確信がある。核兵器の使用や威嚇は人道に対する犯罪であり、核問題の本質には道徳の問題が関わっている。05年のNPT再検討会議の際に寄せられたノーベル平和賞受賞者ロートブラット博士の言葉を借りるならば、「核兵器は根本において非道徳的である。その作用は無差別であり、非戦闘員も軍人も、無辜の民も侵略者も区別しない。いま生ある人々もまだ生まれていない世代も殺戮する。」このような根本認識に立って核兵器を考えるならば、保有する者と依存する者の間に本質的な道徳上の優劣は存在しない。
 日本や韓国が米国の核の傘に依存しないで、自国の安全保障を確保する道とは何であろうか。それこそが、朝鮮半島の非核化であり、さらには北東アジア非核兵器地帯を設立する道である。6か国協議は、そのための貴重な場となり、意義深い成果と教訓を生み出しつつある。

§スリー・プラス・スリーの北東アジア非核兵器地帯
 ここで、北東アジア非核兵器地帯の内容を明確にするために、筆者たちが韓国のNGOの友人たちと協議しつつ発展させてきた、スリー・プラス・スリー構想に基づく北東アジア非核兵器地帯について説明するのが適当であろう。これは、この地域の現状を踏まえた現実的な案として構想された。グローバルな核兵器非合法化の努力と並行し、地域の主体性を発揮する道でもある。
 この構想においては、日本、大韓民国(韓国)、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の3か国が地理的な非核兵器地帯を構成し、米国、ロシア、中国の3か国がその非核兵器地帯を尊重し、核攻撃・威嚇を行わない消極的安全保証を与えるという6か国条約を締結する。私たちはモデル条約(注1)を起草したが、モデル条約の締約国には「地帯内国家 (intra-zonal states)」(日本、韓国、北朝鮮)と「近隣核兵器国 (neighboring nuclear weapon states)」(中国、米国、ロシア)の2つの範疇が存在する。地帯内国家には非核国家としての義務が課せられ、近隣核兵器国には核兵器国としての義務が課せられる。
 地帯内国家の非核義務の中には、単に核兵器の開発や保有の禁止のみならず、「安全保障政策のすべての側面において、核兵器に依存することを排除する」義務が含まれている。いわゆる「核の傘」政策の放棄であり、これは世界に5つ存在する既存の非核兵器地帯条約にはない新しい条項である。また、核兵器国の義務である消極的安全保証の条項は、他の非核地帯条約においては条約本体ではなく議定書に含まれ、条約成立後に核兵器国に対して加盟を求める形式となっている。しかし、モデル条約では近隣核兵器国が地域の安保問題に深く関与しているとともに、安全の保証が地帯内国家にとって強い関心事であることを考慮し、近隣核兵器国による消極的安全保証の義務条項は条約本体に組み込まれている。この条約によって、日本は中国や北朝鮮の核の脅威から解放されるし、北朝鮮は米国の核の脅威から解放される。また、韓国と北朝鮮は日本核武装の懸念を払拭することができる。
 モデル条約が構想している「北東アジア非核兵器地帯」と6か国協議が目指している「朝鮮半島の非核化」とはどのような関係にあるのだろうか。
 第1に、「非核朝鮮半島」においては、北東アジアにおける緊張の一つの主要な要素である日本と中国の間の緊張は手つかずのまま残される点に注意を喚起したい。その意味では、北東アジア全体の協調的な安全保障機構としては不完全なものとなる。日本の核安保政策の根本には中国の核兵器への懸念が存在している。中国は、核兵器保有の当初から、非核兵器国に対して核攻撃をしないという保証(消極的安全保証)を無条件に与えること、また、核兵器を最初に使用する国にならないこと(「第一不使用」政策)を繰り返し宣言してきたが、日本政府は「信用できない」という立場をとり続けている。この関係を克服しなければならないが、「朝鮮半島の非核化」だけでは、この関係に変化は起きないであろう。しかし、北東アジア非核兵器地帯が実現すれば、中国など核兵器国による消極的安全保証に法的拘束力をもつ義務が課せられることになる。これによって、日本は脅威の一つから解放され、日中間の緊張は大きく緩和されるであろう。またその結果として、この地域の緊張の一要因である米軍プレゼンスの必要性も大幅に減少する効果を生む。
 第2に、朝鮮半島の非核化が実現した後において、IAEAの査察下にあるとはいえ、日本のみが使用済み核燃料の再処理施設やウラン濃縮施設を保有する状態は、北東アジアの核状況に決して安定をもたらさないであろう。朝鮮半島から見た日本に対する核問題についての不信は解消されないし、将来増幅して行く可能性が強い。この問題の解決には、韓国、北朝鮮、日本の核関連活動を一つの相互査察システムの下に置くことが望ましい。北東アジア非核兵器地帯の設立は、既存の全ての非核兵器地帯条約が備えている、そのような制度の確立を可能にする。さらには、日本の再処理・濃縮施設のあり方について、その国際化も含めて議論する枠組みを形成することが可能になる。
 第3に、「朝鮮半島の非核化」プロセスにおいては、北東アジアの協調的安全保障の担い手として中心的役割を果たすべき韓国、北朝鮮、日本が対話を深めてゆく機会が必ずしも保証されない。6か国協議を含めて現在進行しているプロセスでは米国の影響力が極めて強く、その状況は当面の問題が解決した後にも継続するであろう。それは、地域の国際関係が地域外超大国である米国の意図によって強く左右される可能性を引きずることを意味している。北東アジア非核兵器地帯条約においては、その構成上、地帯内国家である非核3か国が中心となって協調的な地域安全保障の担い手となって行くことが期待される。
 第4に、韓国と日本が米国との同盟国であり、米軍の艦船や航空機は両国を自由に往来する現状においては、朝鮮半島の非核化は日本における米軍活動を考慮に入れざるを得ないことを意味している。その意味では、朝鮮半島の非核化は日本を含む北東アジアの非核化と必然的に関係し、朝鮮半島だけで留まることのできない性質のものであると言える。この問題は、まさに6か国協議における今日的問題である検証問題に関係しており、次に詳しく論じることにする。

§6か国協議における検証問題と日本・韓国の課題
 05年の9.19共同声明に明記されているように、6か国協議の第一義的目的は「平和的な方法による、朝鮮半島の検証可能な非核化」である。08年7月に開催された6か国協議代表者会議においては、そのために「検証メカニズム」を設置することが決定された。この検証メカニズムは、北朝鮮が提出した核申告を検証するためのものであるかのように誤解されがちであるが、そうではない。当然にも、申告の検証を含むことになるであろうが、広く朝鮮半島の非核化を実現するためのメカニズムとして設置されたものである。潘基文国連事務総長が「強力な検証システムに裏打ちされた核兵器禁止条約」を提案したことに現れているように、検証問題は世界が核兵器の非合法化をめざすときに必ず直面する問題である。北東アジア地域においては、それがいま焦点化しているのであり、その意味で6か国協議の合意がここまで進展したことは高く評価されるべきことである。しかし、検証の内容、方法、手順に関する合意は、多くの困難が予想される今後の交渉にすべて委ねられている。
 この交渉は5.19声明に謳われた「行動対行動」の原則を踏まえつつ行われる。同時に、前述したように「核兵器は人道に対する罪である」という暗黙の前提に照らして、公正な検証が追求されなければならないであろう。北朝鮮の核兵器も、米国の核兵器も、日本や韓国の核の傘も、同じように人道に対する罪を形成する。ブリクス委員会は「大量破壊兵器は誰の手にあっても危険である」という表現で原則を示したが、世界が核兵器の非合法化に向かおうとしている流れには、そのような原則が絶えず水面下に存在している。同時代の北東アジアにおいて、同じ原則が適用されるべきことは当然であろう。
 このような考えの下においては、北朝鮮の核弾頭や核実験場の検証を伴う廃棄、在韓米軍の弾薬庫、寄港艦船・航空機の検証を伴う非核証明などが、朝鮮半島の非核化のために平等に避けることのできない問題として浮上する。さらに注目すべきことは、この問題は日本の非核三原則の検証問題を改めて焦点化せざるを得ないことである。なぜならば、たとえば日本の市民団体の調査によれば、年によって差はあるが、日本の岩国米海兵隊航空基地を飛び立つ米軍機の5%~10%の行き先は韓国である。また、横須賀や佐世保を母港とする米海軍の軍艦はしばしば韓国領海を通過したり、寄港したりする。日本の非核三原則が遵守されていれば、日本発の米軍艦船・航空機は核兵器を搭載していないという前提で韓国の非核証明の助けになる。しかし、日本政府が非核三原則の遵守のために採用している事前協議制度は、日本においてほとんどの関係自治体や市民が不十分であると考えているものである。その制度とは、「寄港や領海通過を含めて、米軍が日本に核兵器を持ち込むときには日本政府に事前協議を提起しなければならない。事前協議があれば日本はそれを拒否する。事前協議が提起されない限り核兵器の持ち込みはないと考える」というものである。しかし、この制度は特定の時間と場所における核兵器の有無を「肯定も否定もしない(NCND)」という米国の政策(NCND政策)と矛盾する。非核三原則の法制化によってこのあいまいな状況を改善しようという日本の市民の要求が続いているが、長く状況は変わらないままである。
 このように、朝鮮半島の非核化は単に北朝鮮の核計画の検証を必要とするだけではなくて、核兵器依存国である日本政府と韓国政府の非核化努力を伴わなければならない。具体的には、韓国、日本の両政府は協力して米国に対してNCND政策の撤回を求め、検証可能な形での自国の非核化を実現することが必要であろう。朝鮮半島の非核化のためだけであってもこのような努力が求められるが、明らかにこれは北東アジア非核兵器地帯が必要としているものでもある。

§むすび
 2010年に向けて世界規模で進行している「核兵器のない世界」への動きは、「核兵器の非合法化(たとえば核兵器禁止条約の交渉)」と「核兵器に依存しない安全保障への転換」という課題に焦点を結ぼうとしている。そこに現れている考え方は北東アジア非核地帯化へのビジョンに共通するものであり、世界と地域が共鳴しあって非核化への道を加速させる可能性をはらんでいる。地域的文脈でこの流れをとらえるとき、6か国協議が目指す朝鮮半島の非核化という目標においても、北朝鮮の非核化のみが問題なのではなくて、米国の核軍縮や核政策の緩和はもちろんのこと、米国の核兵器に依存する日本や韓国の安全保障政策の転換が同じように問題となることを意味している。したがって、6か国協議が直面している検証問題の困難は、すべての国に関わる問題として克服されなければならない。たとえば朝鮮半島の非核化検証問題は、地理的には朝鮮半島を超えて日本の非核三原則の検証問題に波及する。日本政府と韓国政府が協力し合って米国のNCND政策の転換を求めることが望まれる。このように、さまざまな側面から、朝鮮半島の非核化のテーマは、日本を含む北東アジアの非核化のテーマへと必然的に発展する可能性をはらんでいる。
 朝鮮半島の非核化と北東アジア非核地帯設立のテーマは、あれかこれかの二者択一が求められるテーマではなく、実は一体不可分のテーマと考えるべきであろう。世界における核兵器非合法化の流れと呼応するとき、このことはますます真実となる。

注1:「モデル北東アジア非核地帯条約」は以下のURLで読むことができる。
http://www.peacedepot.org/e-news/workingpaper1.pdf

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