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2015年6月 1日 (月)

NPT再検討会議は核兵器廃絶への主戦場ではない

 1995年のNPT再検討・延長会議以来、核兵器廃絶あるいは「核兵器のない世界」の達成と維持に関心をもつ政府、研究者、市民社会の大部分は、NPT第6条の履行追求を、その主戦場と考えてきたと言ってもよいだろう。しかし、今回の再検討会議はそのような考え方を見直す好い機会だと考える。
 と言ってもNPT再検討プロセスを見限るという意味ではない。再検討会議は5年毎に必ずやってくるし、当面は準備委員会も続く。核兵器国がすでに核兵器廃絶義務を負っているこの条約の完全履行を求めるプロセスを活用しない手はない。
 しかし、1995年会議を迎える時期とそれ以後の会議を含め、20数年間にわたって再検討プロセスを注視してきた筆者の経験を総括すると、このプロセスが核兵器廃絶のために実質的に何かを前進させたのは、当の1995年の会議だけだった。1995年会議はCTBTの1996年中妥結を実現させ(それ以前の蓄積が大きかった)、中東非核・非大量破壊兵器地帯の設立を不動の国際アジェンダとして確立した。これらを勝ち取ることができたのは、無期限延長か有期限延長かという強力なテコがあったからである。無期限延長によってそのテコを失って以後、最終文書が合意されるか否かにかかわらず、NPT再検討プロセスの実質的な成果は無いに等しい。
 NPTプロセスが「核兵器のない世界」達成へ実質的前進を勝ち取るテコは失われたと考えてよいだろう。しかし、そこで議論される論理と帰結する言葉の積み重ねが無意味であるとは思わない。NPT再検討プロセスは、核兵器廃絶の状況の整理(taking stock)と次の目標の開発(developing benchmarks)に有効な多国間会議と位置付けるのがよい。
 NPTと離れて、核兵器廃絶の実質を追求する場を構築すべきである。その観点から考えられるいくつかの場を例示したい。
(1)米ロの核兵器の大幅・迅速な削減を促す場(米ロが数百レベルまで核弾頭を削減すると、核保有国すべてが参加する核軍縮テーブルが可能になる。今回の会議で強調された「戦略的安定性」の議論、とりわけNATO諸国とロシアとの対話が重要と思われる。)
(2)国連総会が設置する「核軍縮のための効果的措置(法的条項を含む)」を議論する公開作業部会(OEWG)(今回の会議の採択されなかった最終文書案で勧告されたもの。米国もこれに賛同する用意があったと最終日に述べている。2016年はNPT準備委員会がない年であり、十分な時間をとって開催できる。将来への継続性を担保すべき。)
(3)人道的影響の知見の帰結として核兵器を国際法で禁止するための協議の場(上記OEWGは国連枠内での場の追求であるが、適切なイニシャチブ国家群が形成されるならば国連の外に法的協議の場を展望できる。)
(4)2018年までに開催される核軍縮国連ハイレベル会議の準備会議(すでに国連総会決議で開催が決定されているが、実質的な会議になるためには早期の準備が必要。上記OEWGと密接な連携が必要である。)

 RECNAポリシーペーパー<REC-PP-01>「2015年NPT再検討会議を終えて―その評価と今後の課題―」(2015年6月)の「あとがき」として書かれた。

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