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2010年5月29日 (土)

NPT再検討会議における核兵器禁止条約(9)~(10)

(9)5月27日

 ピースデポの梅林です。
 5月27日、「25日議長草案」が秘密会議の中で修正され、「最終文書草案」という形で公表されました。これが最終日28日のたたき台として全体会議に付されることになります。各国は午前中に態度を決めて、午後開催の全体会議で討論をします。

 大切なところはほとんど核兵器国によって骨抜きにされて、乱暴な言い方をすると、「2015年の再検討会議まで、一生懸命頑張りましょう」という合意内容です。つまり、頑張らせるテコを無くしてしまいました。とりわけ、大きな後退は、前回報告したように、何時開くという保証がないながらも、国連事務総長が召集する核兵器廃絶ロードマップを協議する会議を2015年以後に持つという内容があったのですが、それが削除されてしまった点です。

 核兵器禁止条約に関係する前回報告の整理に沿って「最終文書草案」の中身を紹介します。

NPT第6条の運用の現状認識について
82節 潘基文5項目提案が「留意する」という格下げされた表現で復活し、25日草案に追加されました。フランスの提案によって核兵器国は無難な部分で譲歩したという取引でしょう。
83節 「核軍縮の最終段階などについては時間を区切った法的枠組みを追求すべきである」という案でしたが、これが薄められて「核軍縮の最終段階などについては法的枠組みを追求すべきである。過半数の国は具体的な時間枠を含むべきであると考えている」となりました。核兵器兵器国は、あくまでも時間枠を避ける意向です。

今後の行動についての行動計画
1Bⅲ 「核兵器国は核兵器のない世界の達成と維持のために必要な枠組みの確立に特別の努力を払う必要があることを強調する。強力な検証制度に裏打ちされた核兵器禁止条約、あるいは条約の枠組みの交渉などを提案した国連事務総長の5項目提案はこの目的に寄与する」という案でしたが、主語は「核兵器国は」から「すべての加盟国は」と修正されました。これはこれで一理あります。
 しかし問題は、事務総長の5項目提案は「寄与する」ではなく、「5項目提案に留意する」と評価抜きの表現に格下げされました。それでも行動計画の前文にこの文言が残っているのは、せめてもの救いです。

行動計画5 行動計画6は25日草案の5が削除されたので行動計画5に繰り上がりました。
 内容的には、核兵器国が協議せよという中身がすべて削除され、骨抜きになりました。核兵器国はそれぞれ以下のa~gに取り組んで2014年の準備委員会に報告せよという内容です。多分、それぞれの核兵器国は何がしのことをやって自画自賛するでしょう。それを踏まえて2015年の会議をやります、という内容です。「国連事務総長は、核兵器の完全廃棄へのロードマップに合意するための終期を定めない高官会議を招集するよう求められる。手段としては普遍的な法的文書の検討も含まれる」という文言は消えました。冒頭に書いたように、大きな後退です。
 a-g項はdとeに重要な変更が加えられました。
 a.すべての種類の保有核兵器の急速な削減
 b.非核兵器国に配備したすべての種類の核兵器とそのためのインフラに関する協議
 c.軍事ドクトリン、安全保証政策における核兵器の役割や重要性をいっそう削減
 d.核兵器が使用されないようにする政策を協議(先行不使用など宣言政策についての協議という言葉が削除された)
 e.核兵器システムの作戦体制(警戒体制)のさらなる緩和に関する非核兵器国の正統な関心を考慮(核兵器国は緩和する必要はない?)
 f.核兵器の事故や無認可による発射の危険を減らす
 g.透明性の強化と相互信頼の増強

行動計画6 上と同じ理由で番号がくりあがりました。表現はさらに簡略化されて、従来のジュネーブ軍縮会議の合意された形の、核軍縮を扱う任務をもった下部機関を直ちに設置すべきという内容です。言葉にしなくても、その下部機関は「意見と情報の交換」の場という域は出ないでしょう。

 以上、核兵器禁止条約という観点から見ると、抽象的表現に後退しましたが「国連事務総長の5項目提案を例とするような法的枠組みの確立に特別の努力を払う」ということが合意文に残っている、というのが現段階でのせめてもの成果だと言えます。
 28日の午後(ニューヨーク時間)にいよいよ最後の局面を迎えます。

(10)5月29日

 ピースデポの梅林です。
 多少情報の混乱があるようですが、リーチング・クリティカル・ウィルによると、最終日の全体会議は午前11時に始まったようです。
 日本での各紙の電子版がすでに伝えているように、最終文書が全会一致で採択されました。内容は、前便で紹介した27日草案がそのまま採択されたということです。(注:前便で行動計画5bに重要な変更が加わっていることを書き忘れていますのでご注意下さい。以下が正確です。)

 核兵器禁止条約に関係する行動計画の部分を正確に翻訳しておきます。

1Bⅲ 再検討会議は、すべての核兵器国に対し具体的な軍縮努力に取り組むことを要求する。また、すべての加盟国が核兵器のない世界の達成と維持のために必要な枠組みの確立に特別の努力を払う必要があることを強調する。再検討会議は、国連事務総長の核軍縮についての5項目提案――それは、とりわけ、強力な検証制度に裏打ちされた核兵器禁止条約、あるいは相互に補強する別々の条約の枠組みに関する交渉を考慮する提案をしている――に留意する。

行動計画5 核兵器国は、2000年再検討会議の最終文書に含まれている核軍縮に導く諸措置に関して、国際的な安定、平和、および縮減せず増加する安全保障を促進する方法において、具体的な前進を加速させることを誓約する。この目的をもって、核兵器国はとりわけ次の考えに迅速に取り組む。

 a.行動計画3に特定されているすべての種類の核兵器の地球的な保有量の全体的な削減に向かって迅速に進む。
 b.種類や場所にかかわらずあらゆる核兵器の問題を全般的な核軍縮過程の不可分な部分として対処する。
 c.軍事的また安全保障上の概念、ドクトリン、および政策における核兵器の役割と重要性をさらに縮減する。
 d.核兵器の使用を阻止するとともに最終的に廃棄に導き、核戦争の危険を低め、核不拡散と核軍縮に貢献することのできる政策について協議する。
 e.国際的な安定と安全を促進する方法で核兵器システムの作戦体制をさらに低減することについての非核兵器国の正統な関心を考慮すること。
 f.核兵器の偶発的使用の危険を減少させる。
 g.さらに透明性を強化し相互信頼を強化する。

 核兵器国に対して、2014年の再検討準備委員会において上記の取り組みを報告することを要求する。2015年再検討会議は、状況を整理し第6条の完全履行への次の諸措置を検討する。

行動計画6 全加盟国は、ジュネーブ軍縮会議が、合意された包括的でバランスの取れた作業計画という文脈の中において、核軍縮を扱う下部機関を直ちに設置すべきことに合意する。

 以上です。
 行動計画5、6は結果的に核兵器禁止条約に直接繋がらないものになってしまいました。もともとは核兵器廃絶へのロードマップを議論する会議の招集に繋がるよう書かれていたのですが、このように従来の方法論から一歩も出ない形に後退したのです。
 なお、上記だけでは何のことか分からない項目に説明を加えますと、はNATO配備の核兵器のように領土外に配備された核兵器も議論せよという内容が薄まって表現されたものです。は「NATO戦略概念」「核の傘」などを含む全般的な核兵器政策の問題です。は「単一目的」「先行使用」などいわゆる宣言政策の問題です。は核兵器使用の警戒態勢緩和の問題です。

 中東決議については一定の具体的な成果があったなど最終文書全体に関する評価はいろいろあると思います。
 しかし、「核兵器ない世界」という耳ざわりのよい言葉を口にしながら、核保有国は核兵器の重要性についてまったく考えを変えていないことが、今回の再検討会議で明らかになりました。日本が「先頭に立つ」というのも空証文に終わりました。私たちは、同志国家とNGOが手を組んで基礎固めをする道を、真剣に、しかしあせらずに、じっくりと模索すべきときだと考えています。

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