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2010年5月27日 (木)

NPT再検討会議における核兵器禁止条約(6)~(8)

(6)2010年5月22日

 ピースデポの梅林です。
 第3週を終えて、第1主要委員会の21日付けの報告文書草案(21日草案)が出されました。

 行動計画に関する部分に関しては、先便の私の報告(5)と本質的に変わりません。
要約すると、行動計画の前文に核兵器禁止条約という文言を含む潘基文5項目提案の言葉が生き残って「核兵器のない世界を達成し、維持するために必要な枠組みを設立するために特別の努力払う必要がある」ことが確認されました。しかし、それを具体化する方途はまったく薄められてしまって、ジュネーブ軍縮会議に下部機関を直ちに設置するという表現になってしまった、ということです。
 19日草案では、ジュネーブ軍縮会議の下部機関は従来合意されていた「意見と情報の交換」というきわめて中身の薄い任務を持つことが繰り返し書かれていましたが、21日草案ではその部分が削除されました。その意味では少し言葉が改善されたと言えます。しかし、ジュネーブ軍縮会議の従来の文脈での合意を謳っていますからほとんど表面を繕った改善に過ぎません。このままでは核兵器禁止条約など法的枠組みの実質的な議論の場は、まったくどこにも保証されていないと考えるべきです。

 これまで、今後の行動計画の部分を集中して紹介しましたが、再検討会議の役割の一つに、条約の現状を検討するという仕事があります。その中で、核兵器禁止条約がどう描かれてているかを、要約しておきます。
 14日草案では、①政府や市民社会からの「核兵器のない世界」というビジョンを達成するための新しい提案やイニシャチブを歓迎する、②NPT第6条の履行を期限を定めて履行するという必要性に合意する、③国連事務総長の5項目計画を含む核軍縮・不拡散提案を歓迎する、という3点の現状認識を記述しました。20日草案ではこの表現が薄められ、①では「歓迎する」が「留意する」となり、②は「核軍縮過程の最終段階や関連措置は期限を決めた法的枠組みで追求する必要があることを確認する」という表現に変化し、③は削除され5項目提案の言葉は消えました。21日草案は20日草案と同じです。
 つまり、要約すると、NPT運用の現状認識では、核兵器禁止条約に関する提案があることは認めるが、核軍縮の最終段階までは時間枠のある法的議論が必要だという確認はない、という認識が述べられていることになります。

 残る会議はあと1週間です。最終文書として全会一致の採択をするか、このような内容では一致できないということになるか、まったく予想できません。

 ただ、NPTだけに頼るのではなくて、慎重な討議を経ながら同志国家と市民社会が動き出す別のプロセスを作り出すべきだという機運が、市民社会の中では高まっていくと思います。

(7)2010年5月26日

 ピースデポの梅林です。

 新情報に入る前に、一つ追加して確認しておくべきことがあります。核兵器禁止条約に関する行動計画について14日草案から19日草案に至る過程で時間枠がはずされて決定的に内容が薄められたのですが、「2015年までに核兵器国が協議した後に、国連事務総長が、核兵器廃絶の法的枠組みも含むロードマップについて協議する会議を招集するよう促す」という内容が生き残っています。つまり2015年以後の期日のない可能性というレベルで空証文の色彩の強い形での事務総長イニシャチブ会議の記述が残っています。

 最後の週の月曜日(5月24日)第1主要委員会の修正案(24日草案)が出されましたが、核兵器禁止条約にかかわる現状認識の部分では本質的変更はありません。行動計画を担当する下部組織1の修正もありません。

 第1主要委員会では最新の報告草案をめぐって、議論が行われました。
 中国以外の核兵器国がいっせいに発言をし、核兵器禁止条約や時間枠に関係する部分に対して攻撃を開始しました。以下はリーチング・クリティカル・ウィルとアイキャンからの情報です。
 フランスは、潘基文5項目提案を行動計画からはずし、現状認識の部分で触れるだけにするよう主張しました。ロシアは5項目提案の部分をすべて削除することを求めました。
米、ロ、仏、英ともに、私の前便で書きました「核軍縮過程の最終段階や関連措置は期限を決めた法的枠組みで追求する必要があることを確認する」という文言に反対しました。これ自身、前便で書いたように妥協で薄められたものなのですが、米、英、仏は「期限をきめた」という文言の削除をを求め、ロシアは全文の削除を求めました。
 また、行動計画のジュネーブ軍縮会議の下部機関設置に関する部分で、先便でやや改善されたと紹介した20日草案について、それを元の内容に戻す改悪の提案をしました。つまり、ジュネーブ軍縮会議が合意してきた(しかし、それすら実行できなかった)きわめて薄いない内容(意見と情報の交換)の復活です。
 前便(3)で昨年の安保理サミットの決議1887で「核兵器ない世界への条件を作り出す」という表現が採択されたことが、核兵器国の道具にされてゆくという危惧を書きましたが、フランスがまさにそのことを持ち出して、行動計画の前提部分の書き換えを要求しました。米国もそれを容認しているということです。

 24日、最終文書となる議長のまとめが提案(最終宣言議長草案)(24日議長草案)されました。基本的には各委員会の報告文の最終案を綴じて最終文書たものです。25日付でその修正案(25日議長草案)も出ました。その内容については、別便で報告します。

(8)2010年5月27日

 ピースデポの梅林です。
 NPT再検討会議は、いよいよ最終局面に入りました。

 24日深夜、最終文書となる「最終宣言議長草案」(24日草案)が出され、それに多少の修正をした議長草案(25日草案)が追加されました。以下、基本的に25日草案(本シリーズのテーマでは両者はまったく同じ)を論じます。
 草案は、各主要委員会から上がってきた報告書の最新版を、形式を整えながら綴じたものなので、核兵器禁止条約に関係する部分についても、新しい内容はありません。また、各主要委員会の報告書は合意されたものではなく、その時点における最新の成果物に過ぎないことも、言うまでもないことです。以下に要約して内容を整理しておきます。()内に経過について私のコメントを加えます。

NPT第6条の運用の現状認識について
82節 政府や市民社会から核兵器のない世界を達成するために新しい提案やイニシャチブが出されていることに留意する。(潘基文提案への言及が消え、「歓迎する」が「留意する」に格下げされた)
83節 核軍縮の最終段階などについては時間を区切った法的枠組みを追求すべきである。(第6条の達成ではなく、最終段階に限定した要求になった。そのうえ、核兵器国は時間枠を削除する、あるいは全文削除を要求している)

今後の行動についての行動計画
1Bⅲ 核兵器国は核兵器のない世界の達成と維持のために必要な枠組みの確立に特別の努力を払う必要があることを強調する。強力な検証制度に裏打ちされた核兵器禁止条約、あるいは条約の枠組みの交渉などを提案した国連事務総長の5項目提案はこの目的に寄与する。(5項目提案の部分を行動計画からはずして現状認識に移せという意見がある。
行動計画6 核兵器国は2000年合意の実行を加速させるため、核軍縮の具体的措置7項目のタイムリーな協議を召集すべきである。その結果を次の再検討サイクル(2010年~2015年)内に協議結果を報告すべきである。国連事務総長は、その結果も踏まえて、核兵器の完全廃棄へのロードマップに合意するための終期を定めない高官会議を招集するよう求められる。手段としては普遍的な法的文書の検討も含まれる。(ロードマップの協議の時期が最初は2014年とされていたのが、何時のことか不明な空証文になりなねない内容になった。この項目について、核兵器国からのさらに強い抵抗があると予想される)
 a.すべての種類の保有核兵器の急速な削減
 b.非核兵器国に配備したすべての種類の核兵器とそのためのインフラに関する協議
 c.軍事ドクトリン、安全保証政策における核兵器の役割や重要性をいっそう削減
 d.相互の先行不使用など宣言政策についての協議
 e.核兵器システムの作戦体制(警戒体制)のさらなる緩和
 f.核兵器の事故や無認可による発射の危険を減らす
 g.透明性の強化と相互信頼の増強
行動計画7 ジュネーブ軍縮会議は、合意されている、包括的な、バランスの取れた作業計画という文脈において、核軍縮を扱う任務をもった下部機関を直ちに設置すべきことに合意する。(下部機関の任務を、従来の合意レベルである「意見と情報の交換」という文言をはずしたものの、大きく限定する網を掛けたもので、実績からするとほとんど無意味な合意である。さらに悪くする修正案を出されている)

 このシリーズで追ってきたテーマは、NPT再検討会議全体の動向を決める重要な1項目ですが、他にも中東決議の行方、消極的安全保証、平和利用の権利、脱退の権利、など重要問題があります。核軍縮というこのシリーズの項目だけでも、最終文書の採択は予断を許しません。また、多くのNGOは文書の採択が自己目的ではない、実際に核軍縮が進まないあいまいな合意はもう沢山だ、との意見を多くが持っています。私も同感です。まじめな国の多くも同じ考えでしょう。

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