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2010年5月21日 (金)

NPT再検討会議における核兵器禁止条約(1)~(5)

(1)2010年5月5日

 ニューヨークからピースデポの梅林です。

 一般討論の2日間が過ぎただけですが、核兵器禁止条約(NWC)をめぐる各国の議論にこれまでと違った雰囲気が感じられないというのが、正直な感想です。非同盟運動はこれまでと同じように頑張っています。新アジェンダ連合(エジプトが幹事)はこの問題に言及しませんでした。論調にも迫力がありませんでした。日本の演説は、アメリカについて行くという印象をこれまで以上に感じるものです。オバマ政権に無批判について行くという印象は、国際的に誤解を与えます。日本の国内事情(とくに普天間問題)への気兼ねが、反映しているというような好意的な解釈は、国際的には通用しません。

 NWCに触れたわけではありませんが、議論に迫力があったのはノルウェーです。「最終文書に合意ができたというようなレベルでは満足しない。本当に、変化を生む内容に合意できるかどうかだ」という趣旨のことを言っていました。

 一般討論はまだ2日続きます。議論が煮詰まってゆく来週以後で変化が起こることを期待したいと思います。

(2)2010年5月7日

 ニューヨークからピースデポの梅林です。

 国連の中の出来事ではないのですが、核兵器禁止条約について勇気付けられる場面がありました。

 今回の再検討会議の議長であるカバクトゥラン大使を囲むレセプションが中堅国家構想(MPI)主催で開かれました。多くの外交官、専門家、NGO代表が参加するレセプションでした。平岡秀夫議員も参加されていました。

 MPIとしては、NGOの立場から核兵器禁止条約の重要性を印象付けて、カバクトゥラン議長の会議運営に少しでも影響を与えたいという思惑があって、そのようなスピーチやパフォーマンスがあったのですが、それに応える議長の挨拶が印象深いものでした。

 議長は、NPTが核兵器禁止条約を支持するのは当然のことである。NGOの皆さんはどうしてもっと頑張って自分の国の政府にそう言わせないのか。と逆に発破をかける「挑発」をした感じでした。「議長は中立であるべきで、おおくの発言の中央をみつける」と断りながらも、自分としては可能ならばぜひ「核兵器禁止条約」に最終文書で言及したいという気持ちが表出されたと思います。和やかな雰囲気の中で強い拍手が続きました。

 エジプトが新アジェンダ連合の幹事国としてではなく、自国の立場を表明する一般演説を行いました。その中で核兵器禁止条約への支持を表明しました。このことは、前便で述べたように新アジェンダ連合がこの点で一致できなかったことをかえって印象付けるものに私には映りました。

 しかし、一方で非同盟運動に参加している国が、単に非同盟を代表した冒頭演説(インドネシア)で核兵器禁止条約を主張することに満足するのではなくて、個々の国の一般演説でこの問題に言及する傾向が増えているような気がします。正確には、昨年の準備委員会の時など過去の例との比較をしてみる必要がありますが。

 いずれにしても、非同盟運動参加国とヨーロッパの中立国?(オーストリア、スイス、リヒテンシュタイン)が今のところ核兵器禁止条約を支持する主張をしているというまとめになります。この状況が、議長の頑張りにどのような影響を生むのか、来週以後を注視したいと思います。明日は、NGOのプレゼンテーションの日です。当然、核兵器禁止条約の必要性が主張されますが、来週以降もNGOはさまざまな包囲網を計画しています。

(3)2010年5月15日

 ピースデポの梅林です。

 昨日(金)、核軍縮などを扱う主要委員会1の議長報告(草案)が提出されました。面白くなってきました。核兵器禁止条約へのプロセスについて次のような内容が盛られています。

「核兵器国は、核軍縮の最終段階と核兵器のない世界の維持に必要な法的枠組みを確立するのに特別の努力を払うべきだ。国連事務総長の5項目提案、とりわけ核兵器禁止条約や相互に補強し合う条約の枠組みがこの目的に役立つ。」

「核兵器国は2011年までに核軍縮について具体的前進を加速するための協議会を招集すべきだ。(戦術核を含めた核軍縮、非核国に配備された核兵器の問題など、協議テーマには7項目が挙げられている。)その報告を2012年に再検討過程のなかで発表すべきだ。」

「この協議を踏まえて、国連事務総長は時間枠を決めて核兵器を完全廃棄するためのロードマップに合意する方法と手段について協議する国際会議を2014年に招集すべきだ。」

 これが今後どう揉まれていくか、予断を許しません。日本政府は大丈夫でしょうか。

(4)2010年5月19日

 ピースデポの梅林です。

月曜日の午後から、先便で書きました主要委員会1の核軍縮に関する議論が始まりました。

核兵器禁止条約、あるいは核軍縮の包括的な法的枠組みの議論を開始する具体的な手掛かりを合意文の中に刻印しようとする攻防(極めて困難な攻防と予想しています)が始まったということです。

まだ、草案のテキストについて具体的な修正案は直接議長に提出されているようで、オープンな議論になる段階には至っていないようです。

リーチング・クリティカル・ウィル(RCW)やアイキャンの報告によると、EUが時間設定をした議長草案について「意見を言わない」と表明したようです。積極派のノルウェーやオーストリアと核兵器国(フランスや英国)との分岐が早くも明確になってきたということです。安保理核サミットで「核兵器のない世界」を目指すのではなくて、「核兵器のない世界」の条件を作り出すという言葉の置き換えをしたことは記憶に新しいと思います。

この辺が、核兵器国のよりどころとなって、今後の議論にボディ・ブローとして効いてきそうに思います。

議長は改訂草案を水曜日に提出する予定です。

現地のNGOは、議長草案を生かすための知恵を絞っているようです。

(5)2010年5月21日--行動計画修正案

 ピースデポの梅林です。
 水曜日(5月19日)に下部組織1(核軍縮問題を扱う主要委員会1の下に設けられた下部組織)が、先便で紹介した14日付主要委員会1の議長報告(以下14日草案)に盛り込まれていた行動計画の修正案(19日修正案)を提出しました。下部組織1は行動計画を集中的に協議する役割を担っています。
 14日草案の行動計画は26項目よりなっており、核軍縮に関する行動計画は第3~第7項目にあります。私の投稿(3)(5月15日)で紹介した核兵器禁止条約に関する部分は以下の3部分に含まれていました。
◆核軍縮の前文
◆第6項目
◆第7項目

 19日修正案は、残念ながら、予想通りの見事に後退したものになりました。核兵器禁止条約に関しては行動すべき時間枠が不明確にされ、ほとんど骨抜きにされたといっても過言ではないでしょう。
◆前文に関しては国連事務総長の5項目提案への言及が生き残りました。「核兵器国は、核兵器のない世界の維持に必要な法的枠組みを確立するのに特別の努力を払うべきだ。国連事務総長の5項目提案、とりわけ強固な検証制度をもった核兵器禁止条約や相互に補強し合う条約の枠組みがこの目的に役立つ。」ただ、14日草案にあった「核軍縮の最終段階を達成する」という言葉が削除されたのは、牙を一本抜かれたと言えます。しかし、少なくとも潘基文5項目の形で核兵器禁止条約への言及が今のところ残っていることはせめてもの成果です。
◆第6項目では核兵器国の協議を2011年までに開催し、2012年の再検討準備委員会で発表するという時間枠が記されていたのですが、それが時期を遅らせるとともにあいまいに薄められました。「核兵器国はタイムリーに協議会を招集し」「次の再検討サイクルの内に協議結果を報告する」と表現されました。つまりは、2015年までに、それ自身抽象的な措置(言語矛盾ですが核軍縮への実際的措置と言われている措置は「すべての種類の核兵器の削減」など7項目ありますが、それ自身かなり抽象的です)についての協議結果を報告するというものです。
◆これにしたがって第7項目も骨抜きになりました。14日草案では国連事務総長が2014年に時間枠を持った核軍縮ロードマップを議論するような会議を招集すると言っていたのですが、「ジュネーブ軍縮会議(CD)が核軍縮に関する下部組織を直ちに設立する」という最悪?の表現になりました。CDにこのような委員会を設立することは10年来言われてきたのですが、実現してこなかったのです。ここでCDを持ち出すのは余りにもひどい後退です。

 これから、激しい巻き返しが始まると思います。一つの注目点は、新アジェンダ連合が14日草案に基本的に好意的に反応していることです。CDの核軍縮に関する役割を何らかの形で言及すべきだという意見を言っていますが、19日修正案のような表現を想定したのではないと思います。非同盟運動は、14日草案を基礎にさらに内容を明確にしたり強化したりする修正案を提案しましたが、それを踏まえて19日案が出てきているという結果です。非同盟運動以外のプレイヤーが必要なのです。今のところ、日本の姿はどこにも見えません。


 もう一つ注目したいのは、新アジェンダ連合が「拡大抑止」を無くしてゆく計画について同盟国に報告を求めるという提案をしていることです。私たちが、2000年以来、日本政府に要求してきたことです。

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