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2009年4月10日 (金)

オバマ大統領、プラハ演説で核兵器廃絶へ困難な船出

――保有国の特権へ切り込み欠く

 オバマ大統領は四月一日、メドベージェフ・ロシア大統領との間で新しい核兵器削減条約の交渉開始に関する共同声明を出したのに続いて、五日、プラハで核兵器廃絶をテーマに演説した。
 大統領選挙の公約であった「核兵器のない世界」への誓約を再度鮮明にした点において、また、その実現を「核兵器を使用した唯一の国として、行動すべき道義的責任がある」と動機づけた点において、演説はひとまず高く評価されるべきであろう。
 しかし、具体的前進がいかに困難であるかもまた、オバマ演説は明らかにしている。
 「核兵器のない世界」実現のために、大統領は核軍縮の前進、核不拡散体制の強化、核物質管理の厳密化、という三つの領域における取り組みが必要だとして、それぞれについて具体的な方針を打ち出した。
 その中には、米ロのさらなる核兵器削減条約、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効、検証可能な兵器用核分裂物質の生産禁止(カットオフ)条約の交渉、核不拡散条約(NPT)違反国への制裁の制度化、世界的な核査察の強化、核物質の厳格な警備保障、それをテーマにしたサミットの開催などが含まれた。
 これらの提案のほとんどは決して新しいものではない。そして、話題となりながらも今まで前進がなかったのには理由があった。
 CTBTや米ロ間の核兵器削減交渉のように、米国が主たる障害となっていた場合については、オバマ政権の登場によって一定の前進が期待できるであろう。しかし、ほとんどの場合において、障害はもっと根の深いところにあった。
 それは、核兵器や核物質に制限を加える主張の内容が公正さを欠いているという、国際的差別構造への途上国の不満である。例えば核査察の強化が言われるが、核兵器保有国の核兵器や兵器用核物質は計量されないし、査察を受けない。そのために、査察の強化は核保有国の特権の永久化につながるという疑念が絶えないのである。
 プラハ演説は、このような根本的問題に届くような切り込みを見せていない。昨年一〇月に潘基文国連事務総長が、今回のプラハ演説と同じテーマで講演をしたが、そこでは例えば、核保有国は「保有核兵器の規模、核分裂物質の備蓄量」の透明性や説明責任の向上を目指すべきであるとして、公正さへの配慮を忘れなかった。
 米国は、国内において強力な核抑止力論者を抱えている。のみならず、六〇年以上の長きにわたって、核抑止力に基づいた国際関係を築いてきた。プラハ演説の前日には、北大西洋条約機構(NATO)が六〇周年記念サミットを開催し、オバマ大統領自身を含めて核兵器の役割を再確認する宣言を採択したばかりであった。
 「核兵器のない世界」実現のためには、このような積年の病巣を一つ一つ説得を重ねて除去しなければならない。
 その意味で、米国の「核の傘」に頼る日本もまた当事者である。「北東アジア非核兵器地帯」によって核兵器依存を止める道を選び、米国の政策転換を促すことが、「核攻撃を受けた唯一の国」日本の道義的責任であろう。(09年4月7日夕、「共同通信」が識者評論として配信)

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